自分でトレーニングを計画する時に抑えるべきポイント

指導者向け 選手・一般の方向け

練習・トレーニングを計画的に進めることは、意図しない疲労や怪我を防ぎ、主要な大会でベストなパフォーマンスを発揮するために重要です(詳しくはこちら)。しかし、実際にトレーニングを計画しようとした時に具体的にどのように計画を立てていったらいいかわからない方もいるかと思います。

筆者はパーソナルトレーナーとして活動をしていますが、学生や社会人選手でコーチがおらず自分で練習メニューを考えて競技に取り組んでいる方は意外と多いです。また、コーチをしていても実際に練習・トレーニングを計画をどのように作成すればいいか難しいと感じている方もいるかと思います。そこで今回はプログラムを考える時に考慮すべきポイントについて解説します。

1.練習・トレーニングを計画するときに抑えるべきポイント

1−1.練習・トレーニングを計画するうえで操作する基本的な変数

練習やトレーニングを計画する上で抑えるべきポイントはトレーニングの「頻度」「強度」「トレーニング時間」をどのように配分するかです(1)。「頻度」は週や月(年)にその練習やトレーニングを何回行うか、「強度」は練習やトレーニングをどのくらいの強さで行うか、「トレーニング時間」は練習やトレーニングをどれくらいの時間行うかです。高強度のトレーニングを長時間、高頻度で行えば疲労が大きくなり、計画した練習ができないばかりか練習の質も下がってしまうでしょう。最悪の場合、怪我につながります。従って、「どんなトレーニングをどのくらいの強度で、何時間、週何回行うか」の配分を考えていくことが重要です。その際、選手やチームの課題を明確にし、どのような練習やトレーニングを行っていくのか、また、何を優先的に行っていくのかなどを考えていく必要があります。

また、1週間の流れだけでなく、月単位で何に重きを置くかを考えることも重要です。毎週毎週同じ練習をしていても長期的なパフォーマンスの向上は望めません。主要な大会から逆算し、しっかりと計画を作ることが重要です。個人競技であれば出場権の有無などで重きを置く大会なども異なってきます。それも考慮しつつどこにピークを持ってきて、それまでになにが必要か、しっかり時間をかけて考えることが重要でしょう(ピーキングに関するおすすめの書籍はこちらの記事から)

1−2.「刺激」と「疲労」を定量化する

綿密な練習やトレーニングを計画したとしてもそれが適切かどうかはやってみなければわかりません。いざ練習やトレーニングをしてみると想定していたよりも強度の高い練習をこなすことができることもあるでしょうし、反対に負荷が大きすぎて想定よりも早く疲労してしまうこともあります。従って、計画したトレーニングが適切に進んでいるかどうかを判断するために、練習の強度や疲労度などをモニタリング(計測)し定量化することが重要です。

“external load”と“internal load”という言葉があります。“external load”は「外的負荷」のことで、ここでお伝えした「刺激」のことです。選手にどれくらい負荷を与えたかを定量化したもので、例えば、走行距離や走行速度、何キロの重りを何回何セットを挙げたかなどが”external load”にあたります。球技系のスポーツでGPSを用いて走行距離などを測定したものもこれに含まれます。

“internal load”は「内的負荷」のことで、「刺激」に対してどのような反応を示したかを定量化したものです。RPE(主観的運動強度)やHR(心拍数)などがこれにあたります。

トレーニング計画を進めるうえで“external load”は考えられますが、”internal load”は意外と見逃されがちです。同じメニューをこなしたとしても、その時のコンディションや選手のトレーニング経験や技術レベルによって身体の反応や疲労度は異なります。「刺激にたいしてどのような反応を示したか(どれくらい疲労したか)」をモニタリングすることは、トレーニングを適切に進めていくうえでとても重要です。

1−3.データをとる際に注意すべきこと

モニタリングすることは重要ですが、データはとればいいというものでもありません。得られたデータを解釈し、トレーニングに役立てる必要があります。不必要に複数のデータを取ってしまうと何を測っていてどのようにトレーニングを評価すればいいか見えにくくなってしまいます。従って、モニタリングをする際は、活かすことができるデータを測定することが必要です。「測定したデータから何がわかるのか」「このデータはとる必要があるか」などを予め吟味しておくことが重要といえます。

2.まとめ

今回は練習・トレーニングを計画する際に必要な変数とモニタリングの重要性について解説しました。「なんとなく」では結果につながらないばかりか怪我を引き起こします。よりよい結果を残すことができるよう、しっかりとしたトレーニング計画を作るとともに、疲労度にあわせてメニューを調整してくことも重要です。モニタリングについては参考文献の本に詳しく載っていますので、もしご興味があれば読んでみてください。

<参考文献>
1.Mike McGuigan(2017), Monitoring Training and Performance in Athletes, HUMANKINETICS