球技系スポーツに必要な持久力とトレーニング
本記事では
- バスケで体力を高めるトレーニングが知りたい
- 終盤バテてしまうので体力をつけたいんだけどどうしたらいい?
という悩みに応えます。
筆者は現在東京都を中心にトレーニング指導をしていますが、大学4年の時にバスケットボールの学生コーチを務めた経験があります。その時は練習メニューの作成から選手の起用も行っていました。
「終盤にバテてしまうからいいトレーニングない?」と相談を受けることがあります。コーチとトレーニング指導を両方の経験を踏まえて考えると、球技系スポーツにおいて、持久力を高めるトレーニングは単にたくさん走って持久力をつければよいというものではないなーと思っています。そこで今回はバスケットボールを例に、球技系スポーツにおける“持久力”について解説し、必要なトレーニングについて考えてみたいと思います。
1.チームスポーツで必要な体力とトレーニング
1−1.チームスポーツで必要な体力とは?
ポジションや戦術にもよりますが、球技系スポーツでは上手い人ほど動きません。これは相手や味方の動きを予測することができるため、ボールや相手に振り回されて無駄なステップを踏んだりダッシュをしたりしないからです。バスケットのコーチをしていた時のことを振り返っても、上手な選手ほどディフェンスやオフェンスの位置どりが上手く、余計な動きが少ないと感じていました。そのため同じ練習をしていても、疲労度は低かったと記憶しています。
何が言いたいかというと、終盤にバテてしまうからといって単に持久系のトレーニングが必要となるわけではないということです。動きを予測できなかったり、技術が劣ることで無駄な動きが多いのであれば、バスケットの練習を優先する必要があるかもしれません。反対に、そもそも持久力が低く、練習を十分な質でこなすことができない場合は、持久系のトレーニングを優先する必要があるでしょう。従って、チームの状況によって練習・トレーニングの優先度は異なってきます。
1−2.戦術によってトレーニングの優先順位は異なる
オフェンスでどのような戦術を用いるかによっても必要な練習は異なります。バスケットで、1試合をアップテンポなオフェンスをして速攻をガンガン仕掛けていくチームと、ハーフコートでゆっくりオフェンスを組み立てていくチームでは、1試合で走る量が異なります。前者の場合は持久力をつけるためのトレーニングや練習が増えるでしょうし、後者では戦術をより緻密に組み立てるための練習が多くなるかもしれません。
一方で、バスケットボールは相手ありきのスポーツです。こちらがハーフコートバスケット(スローペース)でオフェンスを組み立てたとしても、相手がアップテンポなオフェンスをしてきた場合は、それに対応する必要があります。また、相手のフィジカルが強く、当たり負けしてしまえばそこで体力を奪われてしまうため、それに対応するための準備が必要です。従って、自分たちが決めた戦略+相手への対応が求められることになります。ハーフコートオフェンスを重視した場合でも、持久系のトレーニングをしなくていいというわけではなく、ディフェンスをするためにも一定以上の持久力と当たり負けしない身体を作っておくことは重要といえます。
1−3.持久力を高めるために必要なトレーニング
ただ、結局のところ、強いチームは技術はもちろんですが、各種体力要素も高い基準にあります。また、持久力があるほど練習もより高い強度で行うことができるでしょうから、持久力があるに越したことはありません。
トレーニングは期分けといって、時期によって優先順位を変えながらおこなっていくことが必要です。試合が近ければ当然実践的練習の優先度が高まるでしょう。従って、できるだけ試合がないオフシーズンなどにより持久力にフォーカスしたトレーニングを取り入れ、試合期はゲーム形式の練習の中に持久力に刺激を入れるメニュー(small side gameなど)をいれるなど、時期によってトレーニングを変えていく必要があります。ウエイトトレーニングと同じく、試合期に実践形式にフォーカスしすぎてトレーニングができなくなってしまい、持久力が低下してしまうということも考えられます。シーズン前半は調子がよくでもシーズン後半に持久力が低下して走れなくなったという例もよくある話です。試合期は試合を重ねるごとに戦術や技術面で修正を迫られることもありますし、技術、戦術面でやりたいこと・考えることが増えます。その中でもシーズンを通して良いコンディションを保てるようトレーニングを配置していく必要があります。
また、最近はオフロードトレーニングといって、持久系のトレーニングはランではなくバイク等で行うことも増えているようです。ランニングは地面と脚が接地することで脚への負担が増えます。実践的な練習でダッシュやジャンプを繰り返しているので、練習だけで脚への負担はそれなりにあります。その中でランニングでの持久系のトレーニングを加えるとオーバートレーニングになる可能性もあります。そこで持久力系のトレーニングではバイクを使おうということです。バイクを使うと地面から受ける脚への負担を減らしながら肺や代謝系に刺激を入れるとことができます。チームスポーツですとバイクの台数が少ないことで時間がかかってしまうことも考えられますが、練習のスケジュールを工夫しながら取り入れたいところです。
また、先日このようなツイートをしました。
部活とかで全員が同じ条件で走り込みの練習して速い人が遅い人を鼓舞するみたいな光景はよくあるけど、そもそもトップスピードも違えば体力も違うから同条件で持久系トレーニングするのは違うよね。やるときはきちんとテストをして、それぞれに合ったトレーニングが必要。
— S.Shunsuke (@syn_1009) January 27, 2020
実際にトレーニングをする時は、テストをして個人に合わせた強度設定が必要です。テストも様々な種類があります。また、トレーニングの様式もたくさんあります。実際にトレーニングをする時は、数あるテストとトレーニングの良し悪しを理解して何を選択するかということになります。どんなトレーニングが良いかを理解するためには生理学等の専門的な知識も必要です。より詳しく勉強してみたい方は次項でおすすめの本を紹介するので読んでみてください。また、ご相談があればこちらから問い合わせいただければ幸いです。
1−4.「持久力」を理解するために必要な知識とおすすめの本
個人的にこれまでの生理学で最も「持久力」について適格な説明をしていると思うのは「糖」を中心に持久力を説明するものです。つまり「乳酸」について理解することで様々なスポーツの「持久力」の理解に役立ちます。そこで「乳酸」について学ぶためにおすすめの本を紹介します。また、英語ですがインターバルトレーニングについてめちゃくちゃ詳しく書いてある本があるのでそれも合わせて紹介します。
乳酸についてすごくわかりやすく書いてある本です。乳酸について詳しくない方はまずこちらの本を読むことをおすすめします。
乳酸についてより詳しく書いてある本です。より深く勉強したい方向けです。
具体的な測定方法や、各競技で乳酸をどのように考えるかが書いてあります。乳酸が少しわかって各競技でどのように応用されているのか知りたい方向けです。
インターバルトレーニングについてこれほどまとまった本はないでしょう。英語なので読むのが大変な方もいらっしゃるかと思いますが、読むとかなり勉強になります。
2.まとめ
自分がコーチだった経験を振り返りながら、今自分がチームに入ったらどのようにトレーニングを組み立てるかということを考えながら記事をまとめてみました。球技系スポーツでは単純に持久力を高めたいといっても、試合の日程や戦術、個人やチームの優先することなどで取り組む内容は変わります。単純に持久力を高めるためにトレーニングしたいという前に、チームとしてなにがしたいか、個人としてなにがしたいかを整理した上で取り組むのが大切だなーと思っています。
【編集後記】
色々書籍をご紹介してきたので、そのうち固定ページにまとめたいと思います。