#4 スクワットのフォームを考える②

指導者向け 選手・一般の方向け

前回に引き続き、スクワットのフォームの「なぜ?」を考えるうえで必要な要素についてまとめます。

前回は「トルク」を用いて各関節にかかる負荷について考えました。今回はスクワットで「どこの筋肉をどのように鍛えるべきか?」について考えます。

 

1.スクワットで鍛えるべき筋群

僕がスクワットを指導する上で重要だと思う筋肉は太ももの裏にある「ハムストリング」とお尻の筋肉の「臀筋」です。

なぜこれらの筋肉が重要になるのかというと、「高く跳ぶ」、「速く走る」、「ボールを速く投げる・遠くに投げる」といった運動においてとても重要だからです。

従って、「速く走りたい」、「高く跳びたい」と思ってスクワットをする方は、「ハムストリング」と「臀筋」を鍛えるようにスクワットをしなければなりません。もっと言えば、ほぼすべてのスポーツにおいて高いパフォーマンスを発揮しようとしたときに、「ハムストリング」と「臀筋」は重要です。なのでスポーツをしている人はトレーニングによって「ハムストリング」と「臀筋」を鍛える必要があります。マストです。

また、一般の方にも同じことが言えます。腰痛や膝の痛みの予防・改善にはこの「ハムストリング」と「臀筋」を鍛えることが重要です。

 

2.どんなフォームが効果的か

「ハムストリング」と「臀筋」はどのようなフォームで最も効率的にトレーニングできるかというと、Part1で説明した①のフォームです。

なぜかというと股関節に最も負荷がかかるからです(その理由は Part1を参照ください)。

※ここで、「②のフォームでさらに重い重りでトレーニングすればよいのでは?」という人もいるかもしれません。確かに「股関節に同じ負荷をかける」という意味では間違っていないかもしれませんが、おそらくケガをします。この理由についてはまた追ってまとめます。

 

3.①のフォームでスクワットをするために

「じゃあ①のフォームでスクワットをすれば「ハムストリング」と「臀筋」が鍛えられる!」っというわけではないんです。フォームが①のようになっていても「ハムストリング」と「臀筋」が鍛えられるわけではありません。

それがなぜかを説明します。

 

まず筋肉がどのように力を出すかについて考えます。

筋肉はゴムのようなもので、伸びながら力を発揮することができます。

図のようにゴムを引っ張るとゴムは伸びますがゴムが縮む方向に力を出しています。筋肉もこのように伸ばされながら縮もうと力を発揮します。

また、ゴムは緩んでしまうと力を出すことができません。筋肉もこれと同じで、力を発揮するためにはゴムのように「ピン」と張った状態を維持する必要があります。

ここで「ハムストリング」がスクワットの時にどのように力を出しているかを考えてみます。

図は骨盤とハムストリング(腿裏の筋肉)、背筋群の関係を簡単に示したものです。図の赤で示したように、骨盤から膝の裏(下腿)にかけて「ハムストリング」はついています。そして、スクワットで立った姿勢からしゃがむことでハムストリングは伸ばされながら力を出します。(下図①)。

ここで背筋群がないと仮定します。すると骨盤が後傾してしまう(図の右)ためハムストリングは緩んでしまいます。筋肉はゴムと同じように力を出すので、「ピン」と張りを維持できなくなった「ハムストリング」は力を発揮することができません。(図②)

従ってハムストリングで力を発揮するためには「背筋群」が力を発揮し、骨盤の前傾を保つ必要があります。この骨盤の前傾を保つために背部の筋群はとても重要になります(図③)

従ってスクワットで「ハムストリング」を鍛えるためには

・ハムストリングの張りを維持する」必要がある。

・ハムストリングの張りを維持するために背筋群が力を発揮しなければならない

となります。また、

「ハムストリングに柔軟性がない」

とそもそもハムストリングが伸びることができないため、しゃがむことができません。従ってハムストリングの柔軟性もとても重要になります。

 

4.まとめ 

「ハムストリング」と「臀筋」を効率よく鍛えるフォームの「なぜ?」について解説しました。「ハムストリング」、「骨盤の前傾」、「背部の筋力」というのが重要なキーワードになります。この関係を応用していくとスポーツの指導で、「なぜその姿勢がとれないのか?」を考えることができます。ハムストリングの柔軟性が欠けていたり、背部の筋力がないことが、求めている姿勢が取れない原因になっているかもしれません。

 

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