#43 測定方法によるジャンプの高さの違い

指導者向け

1つ前のブログでジャンプ力の計測方法とトレーニングについて解説しました。その中で測定方法が異なるとジャンプ高が異なることを述べました。そこで今回は垂直跳びの測定方法を紹介し、測定方法がどのように記録に影響を与えるかについて解説します。

1.測定方法による違いがなぜ起きるのか

1−1.垂直跳びを計測する方法

まず、どのような垂直跳びの計測方法があるのかについて解説します。

①到達点で計測する

1つ目はジャンプして到達した指の高さから、立っている姿勢で手を上げた時の指先の高さを引いた距離によってジャンプ高を測定する方法です。Vertec(バーテック)やヤードスティック、学校の体育館などにある計測板を使った計測がこの方法になります。指にチョークをつけ、模造紙に印をつけて測ることもできます(1)。

②対空時間から計測する

人間を重心系で考えた時、垂直跳びで地面から足が離れると重心は鉛直投げ上げ運動をすることになるので、対空時間から高さを算出することができます(重心に関する解説はこちら、バイオメカニクスの基礎的な解説はこちら)。前回ブログで紹介した方法はこの方法で計測をしています。つまり、足が地面から離れた瞬間の時点から地面に接地した時点までの時間を求めればそれが対空時間になるので、そこからジャンプ高を算出できるというわけです。また、ジャンプマットという対空時間を計測する測定器具もあります。

③重心高を直接測る

垂直跳びをして最も高くなった時点の重心高から、立っている時点の重心の高さを引くと跳躍高が算出できます。しかし、重心を直接測定するためには3次元動作解析をするための機材や知識が必要になるため、簡便には測定することができない方法と言えます。

1−2.測定方法による違いが記録に及ぼす影響

では、実際に測定方法によってどのように記録が異なってくるかについて解説します。3次元動作解析・Vertec・ジャンプマットを同時に使い、測定方法による跳躍高の違いを調べた研究によると(2)、3次元動作解析とジャンプマットに有意な差はみらませんでしたが、3次元動作解析とVertecには有意な差がみられました。従って、ジャンプマットの測定がより妥当性(その方法が測定しようとしているものをどれくらい適切に測定できているか)があるとされています。Vertecは最初にどれくらい手を伸ばすかや肩の柔軟性などによっても記録が異なるため、誤差が大きくなってしまうと考えられます。ジャンプマットとJump eyeは計測方法の原理は基本的には同じなので、アプリでの測定でもある程度の妥当性は担保されているといえます。前回のブログでも書きましたが、Jump eyeはやはりオススメです。

1−3.測定方法が同じでも誤差はある

前項でジャンプマットやJump eyeのアプリの測定がより正確にジャンプ高を計測できることを述べました。しかし、ジャンプマットやJump eyeによる測定でも誤差はでます。着地の仕方によって滞空時間が変わってしまうからです(3)。特に足首や膝を曲げた姿勢で着地をしてしまうと滞空時間が長くなってしまい、記録が高くなってしまいます。測定をする際は、故意に膝や足首を曲げて着地するようにするのは避け、自然に跳びあがって自然に着地するよう指示するのがいいでしょう。また、測定方法については特に述べず、「できるだけ高くジャンプしてください」などのように簡潔な指示にとどめるというのも一つかと思います。

2.まとめ

ジャンプ力を計測する場合、測定方法による違いと同じを測定器具でも誤差がでることを頭に入れておくと、測定したデータをより正確に解釈することができます。ニュースなどでも時々「〇〇選手の垂直跳びは〇㎝!」のような記事を見ることがありますが、今回ご説明した通り測定器具によって誤差があるので、安易にその数値を鵜呑みにしないほうがいいです。

一定期間を経て記録が向上しているかどうかを確かめることは、行っているトレーニングの良し悪しを判断する1つの指標になります。 垂直跳びはその1つのいい指標になるので、是非計測をしてよりよいトレーニングができるよう取り組んでいただければと思います。

<参考文献>
1.文部省体育局スポーツ課内社会体育研究会. スポーツテスト-その実施と活用―児童生徒編; 1978

2.John S. Leard, Melissa A. Cirillo, Eugene Katsnelson, Deena A. Kimiatek, Tim W. Miller, Kenan Trebincevic, and Juan C. Garbalosa, Validity of two alternative systems for measuring vertical jump height, Journal of strength and conditioning research, 1296-1299, 2007

3.山下大地, 村田宗紀, 稲葉優希, 力積と滞空時間を用いた跳躍高算出における差異の要因 ―姿勢の違いに着目して―, 2017