#3 スクワットのフォームを考える①

指導者向け 選手・一般の方向け

「ウエイトトレーニングをしよう!」と思った時、まず真っ先に思い浮かぶのが「ベンチプレス」と「スクワット」ではないでしょうか?

身近に教えてくれる人がいないとなると、Youtubeをみたり、本を読んだりして「こんな感じ?」と思いながらスクワットをしている人も多いと思います。

でもスクワットって凄く奥が深くて「なんとなく」やっているとケガをしたり、効果が得られなかったりします。僕がフィットネス施設でアルバイトをしていたときにスクワットをしている人を見て、「このフォームは危ないなー」とか「いずれ絶対ケガをするなー」などと思うことは少なくなかったです。

今回から、スクワットのフォームについてどのように考えていけばいいかを数回に分けて説明していこうと思います。今回はPart1で「トルク」についてです。

 

1.トルクについて理解する

みなさんは「トルク」という言葉をご存知でしょうか?スクワットのフォームを考えるために大切な概念なので時間をかけて説明していきます。

突然ですが、ドアを開けるとき、ドアノブを手で押すとスムーズにドアが開きますが、「ドアの根本を押すと開けるのに凄く力がいる」という経験はないでしょうか?ない方は試に近くにあるドアで試してみてください。

①ドアノブ付近を押してドアを開ける。

②ドアの根本を押してドアを開ける。

この2つです。

なぜドアを開けるのに必要な力が違うのでしょうか?その答えが「トルク」にあります。

「トルク」とは回転力のことで「距離×力」で求めることができます。図を用いて詳しく説明します。

ドアを開けるのに5N・m(ニュートンメートルと読みます)の「トルク」が必要だと仮定します。①の場合ドアの付け根からドアノブまでの距離は1mなので、必要な力は5Nです。一方②では距離が0.2mなので必要な力は25Nです。②は①よりも距離が1/5になることで必要な力が5倍になっています。

すなわち①よりも②で力が必要なのは、②の方が①よりも「距離」が短いからということになります。

このように物体を回転させる力を「トルク」といい、「トルク」は「距離×力」で求めることができます。図で示したように、同じトルクが必要でも「距離」が違うことで必要な「力」が変わります。

 

2.トルクを用いてスクワットのフォームを考える

先ほどの考えをスクワットのフォームに応用するとどうなるでしょうか。下の図をみてください。

重りをもってスクワットをして1000Nの力がかかっているとします。①では股関節(赤丸)から重りまでの距離は1.0mで、②は股関節までの距離が0.5mだったとします。股関節にかかる「トルク」は「力×距離」なので①では1000N・m、②では500N・mです。すなわち②は①に比べ、2倍のトルクが股関節にかかっていることになります。

※ここで1点補足です。トルクで計算する「距離」は「支点から作用点までの水平距離」です。従って、図のトルクを計算する場合、上半身の長さではなく股関節から重りまでの水平距離で計算をしています。

続いて膝関節にかかるトルクも考えてみましょう。①のフォームでは膝にかかるトルクは0です。なぜならば重りからの距離が0だからです。一方②は「0.5m×1000N=500N」です。

まとめると、

①のフォームでは「股関節に1000N・m 膝関節には0N・m」

②のフォームでは股関節に500N・m 膝関節には500N・m」

のトルクがかかっています。従って、同じ重さを扱っていてもフォームが違えば各関節にかかるトルクは異なるということです。

 

3.まとめ

前項で①と②の「トルク」を計算することで股関節、膝関節にかかる負荷について考えました。この「トルク」を求めることで何が言いたいかというと

①のフォームでは股関節を最大限に使ってスクワットをしている

②のフォームでは股関節と膝関節を使ってスクワットをしている

ということです。従って「股関節の筋群をトレーニングしたい」ということが目的であれば①のフォームをとるべきですし、「膝関節もトレーニングしたい」となれば②のフォームを目指すことになります。

「トルク」を理解することで、他人のスクワットを見たり自分のスクワットの動画を撮って見たときに「今どんな負荷がかかっているか」を分析することができます。

今一度自分のスクワットを見直してみてはいかがでしょうか?

 

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