#14 ジュニア期にウエイトトレーニングは必要か?

指導者向け

「筋肉がつくと身長が伸びなくなる」や「筋肉がつくと身体が重くなって動きが鈍くなる」という理由で小・中学生にいわゆる「筋トレ」は不要であると考える方もいると思います。しかし、サッカーやバスケットボールを行っているときにかかる身体への負担を考えると、「適切」に与えられたウエイトトレーニングは小学生、中学生にも効果的であると考えられます。

今回はジュニア期(小・中学生)にとってのウエイトトレーニングについて考えます。


目次

1.ウエイトトレーニングは子どもの発達に悪い影響を及ぼすのか?

2.競技動作とウエイトトレーニングでかかる身体への負担について

3.現場でできるウエイトトレーニングの取り入れ方と工夫

4.まとめ


1.ウエイトトレーニングは子どもの発達に悪い影響を及ぼすのか?

「筋肉がつくと身長が伸びなくなる」といわれることもありますが、科学的にはウエイトトレーニングが思春期の発育・発達にマイナスの影響を与えるとは言われていません。それよりも、適切にプログラムされたトレーニングは筋力を向上させたり、骨を強くしたりと様々な効果があると言われています。

従って、科学的にはジュニア期にウエイトトレーニングを行った方が発育・発達を阻害することなく筋力を向上させることができるといえます。

しかし、過度なウエイトトレーニングは当然ですが子どもの発達に悪影響を及ぼすでしょう。例えばいきなり100㎏の重りを持ってスクワットをさせたり、実施できないほど腕立て伏せを行わせたりすることは障害に繋がります。

従って「適切な」トレーニングを処方することが必要となります。

2.競技動作とウエイトトレーニングでかかる身体への負担について

「スポーツを行っているときにかかる身体への負担」と「ウエイトトレーニングでかかる身体への負担」について考えてみたいと思います。

例えば、全力疾走をしているときには地面から体重の4倍以上の力を受けていると言われています。球技であれば、全力で走ったり、跳んだり、切り返したりする動作をゲーム中にたくさん行うわけですから、当然身体には地面から体重の数倍の力を受け続けていることが考えられます。

一方、ウエイトトレーニングではどうでしょうか?当然ですが重りを持ってスクワットをすれば当然体重の数倍の力を地面から受けます。

従って、競技動作中であってもウエイトトレーニングであっても負荷の大きさは大小はあるものの、それなりの負荷がかかります。

ここで「スポーツを行っているとき」と「ウエイトトレーニング」の大きな違いは「負荷のかけ方」です。

競技動作中は「いかに速く動くか」や「いかに高く跳ぶか」ということが目的となるので関節への負担などは考慮されません。多少関節に負担がかかろうと「勝つため」の動作が優先されます。

一方、ウエイトトレーニングでは「健康で効果的」である動作が目的となります。ウエイトトレーニングは関節への負担を考慮し、動作をコントロールした状態で行うので身体に過度な負担を強いることはありません。

従ってウエイトトレーニングは身体に過度な負担をかけることなく筋力を向上させることができます。

3.現場でできるウエイトトレーニングの取り入れ方と工夫

実際にウエイトトレーニングを取り入れようとすると種目や頻度、他の練習との兼ね合い、環境による工夫など様々なことを考慮してプログラムを組まなければなりません。特にジュニア期でウエイトトレーニングを行おうとすると、実施する場所の多くは「学校」であると考えられ、道具や場所の制限もあるのでなかなか実施が難しいかもしれません。しかしそんな中でも工夫次第で様々なトレーニングを行うことができます。

当然、施設が整っていることに越したことはないですが、バーベルや重りがなくても様々な工夫をすることである程度の負荷をかけることが可能です。

もし、トレーニングを取り入れてみたいという方がいればお問い合わせください。

4.まとめ

ジュニア期で適切なウエイトトレーニングを取り入れることで筋力の向上など様々な効果を得ることができます。また、健康に身体を鍛えることで慢性痛の予防などにもつながります。ウエイトトレーニングで健康で強い身体を作り、パフォーマンスを向上させる選手が増えるとよりよい選手が生まれるのではないかと考えています。

 

<参考文献>

・青少年のレジスタンストレーニング:NSCAポジションステイトメント 最新版, 2011

・子どものためのレジスタンストレーニング, Avery D. Faigenbaum,  Strength & Conditioning Journal, 13(8), p46-50, 2006

・The Effectiveness of Resistance Training in Children, B.Falk and G. Tenenbaum, Sport Med, 22(3), p176-186, 1996

・バイオメカニクス 身体運動の科学的基礎, 金子公宥, 福永哲夫編, 杏林書院, (2004)