#12 できない理由を考える~「なんでできないんだ!」はコーチとして最も言ってはいけない言葉
コーチとして運動選手を指導するうえで「なんでできないんだ!」という言葉は最も言ってはいけない言葉です。
「なんでできないんだ」=選手がその動きをなぜできないからがわからない
ということを暗に伝えているからです。
コーチは「なんでできないんだ!」という前に、その運動ができない理由を考えて「どうすればいいか」を指導するべきです。
そこで今回は「なぜその運動ができないか」を考える際にヒントになる考え方を紹介します。
目次
1.動作を局面に分ける
2.どの局面の動作が影響しているかを考える
3.解決策を考える
4.まとめ
1.動作を局面に分ける
ある運動は局面に分けることができます。
器械運動の「前転」を例に考えてみます。
前転は
1.軽くしゃがんだ姿勢から軽く脚を伸ばして手をつき
2.ぐるんと転がって
3.立つ
という動作に分けることができます。
専門的な言葉を用いると1が「準備局面」、2が「主要局面」、3が「終末局面」といいます。このように動作は大まかに局面に分けることができます。
2.どの動作が影響しているか考える
次にどの局面の動作が「できない」要因になっているかを考えます。
前転で立ち上がることができない子を見た場合、どんなアドバイスを送るでしょうか?「もっと勢いよく回って」とか、「グンっと回って立ち上がるんだよ」のようなアドバイスを送るでしょうか?おそらくこのアドバイスは「2」の「ぐるんと転がって」にフォーカスしていると思います。
ここで「勢い」をつける動作は何かを考えてみます。
2の局面の役割はなんでしょうか?2の局面の役割は最初についた勢い(加速)を伝える局面です。2の局面に入る段階で身体に勢いがなければ2の局面で勢いを伝えることができません。
従って、1の「軽く脚を伸ばして手をつく」という動作の段階で身体を加速しなければならないのです。
そもそも1で身体に「勢い」をつけることができない子どもは2で「ぐるん」と転がることができないのです(2で勢いを殺さないように回る技術も必要です)。
3.解決策を考える
どの局面の動作が原因かがわかると、その局面の動作を改善するようにドリルを考えます。
1の局面で身体を加速させることができないことが前転ができない要因になっている場合、例えば「手を少し遠くについてみよう」だったり、場合によっては子どもの前に何か障害物を置いてそれを飛び越えさせるようにすると勝手に身体を加速させるようになるかもしれません。
解決の仕方は「指示を出して動作を改善させる」「ドリルをこなすことで動作を改善する」など、手段はいろいろあり、指導者の腕の見せ所でもあります。
4.まとめ
このように運動を局面に分け、どの局面の動作ができない原因となっているかを考えることで動作を改善することに役立ちます。
これはトレーニングを指導するときでも、運動を指導するときにも役立ちます。
自分はトレーニング指導をする際、クリーンやスナッチのクイックリフトで求める動作ができない要因を探るときに応用しています。
「運動」を指導するうえで「なぜ?」を考えるときに「局面に分けて原因となる動作を考える」ということをしてみてはいかがでしょうか?
<参考文献>
体育・スポーツ指導者のための動きの質的分析入門(2007),Duane V Knudson, Craig S. Morrison, 阿江通良(翻訳)
【編集後記】
以前のブログを書き直して加筆・修正しました。また、少しずつ見出しのやり方なども調べてアレンジ中です。少しずつ改善していければと思います。