#7 スクワットのフォームを考える③

指導者向け 選手・一般の方向け

Part1では「トルク」を用いて関節にかかる負荷を、Part2では「スクワットで鍛えるべき筋肉は?」ということで話を進めてきました。

今回は「ケガをしないフォームでスクワットをするために考えるべきこと」についてまとめました。

キーワードは「並進運動と「回転運動」」です。

 

1.「並進運動」と「回転運動」

あるものをに力を加えると物が動きます。この時、物の中心を押すと物体はまっすぐ進みますが中心を外れると物体は回転しながら進みます。図を見てください。

棒の中心を押すと丸は回転せずに進みます。しかし中心以外を押すと棒は回転しながら前に進みます。この時の棒が平行に移動する運動を「並進運動」といい、回転する運動を「回転運動」といいます。

すなわち①は並進運動のみで、②は回転運動と並進運動が組み合わさった運動といえます。

 

2.スクワットで「並進運動」と「回転運動」を考える

今の「並進運動」と「回転運動」をスクワットに応用して考えてみます。大腿はバーベルから力を受けます(図)。

このとき、①のようにバーベルの力が大腿の端を通過する場合、バーベルの力は大腿を回転させるように働きます。すなわち大腿の「回転運動」を引き起こします。一方②のように、バーベルの力が太ももの上を通過する場合、バーベルの力は大腿を回転させるとともに平行に動かすように働きます。すなわち「並進運動」と「回転運動」を引き起こします。大腿の並進運動が起きると、大腿と下腿がずれるように力が作用することになります。このずれを引き起こす力(せん断力)は関節に過度な負担をかけます。以前のブログで紹介した①と②のスクワットで②が身体にとってよくないフォームと説明したのは、せん断力によって関節に過度な負担がかかってしまうからです。

3.まとめ

「並進運動」と「回転運動」からスクワットのフォームについて考察してみました。フォームを力学的な視点から分析することは何が健康的なフォームかを考えることに役立ちます。

<参考文献>

バイオメカニクス20講(2000)、阿江通良、藤井範久、朝倉書店

 

【編集後記】

先日、高校生にトレーニング指導をしてきました。ハムストリングが硬い選手が多く、ジュニア期から効果的なトレーニングをすることの重要性をひしひしと実感した次第です。また、上手な子ほどトレーニングをしっかりこなせる傾向があると感じました。「技術」はもちろんですがそれを実行する「体力」がないと「技術」も伸びにくいと改めて思わされました。。。