#2 なぜトレーニングをすると身体が強くなるのか
選手時代に様々なトレーニングをして、持久力をつけたり高いジャンプ力をもっていたコーチは少なくないと思います。しかし、いざ指導者になり、選手にトレーニングを行わせようと思った時、「どんなトレーニングをしたらいいかわからない」と思ったコーチは少なくないはずです。
今回はトレーニングを選手に行う際に基本となる考え方の「トレーニングの適応」についてまとめてみました。
1.刺激に対する適応について考える
カッターで指を切ってしまっても数日経てば治ります。風邪をひいても何日かすれば治ります。このように人は何か刺激を受けても、自分で治癒できる範囲であれば治すことができます。すなわち人は刺激に対して適応する能力を持っているといえます。
しかし、人間が適応できる範囲を超える刺激が身体に与えられてしまうとどうでしょうか?例えば、揚げ物をしていて誤ってフライパンをひっくり返し、手に油をかぶってしまったらどうでしょう?やけどがひどく、放っておいても治らないので病院に行き処置を受けます。従って、人間が適応できる範囲を超える刺激を身体に受けた場合、人間は適応できず故障してしまいます。
反対に刺激が小さすぎる場合はどうでしょうか?例えばストーブの前で暖を取っている場合、身体は温まりますがやけどは起きませんよね。すなわち刺激が小さい場合、人間に大きな反応は起きません。
ここまでをまとめると、人間に与えられる刺激が「適切」であれば身体は「適応」するということです。
2.1の理論をトレーニングに当てはめてみる
1で取り上げた「切り傷」や「やけど」を「トレーニング」に置き換えて考えてみます。トレーニングで「刺激」を考える場合、「強度」、「量」などを考えなければなりません。「強度」は負荷の大きさ、「量」は時間や距離と考えればよいです。
例えばグラウンドを1周するのに60秒かかるA君がいたとします。A君の体力を伸ばすために以下のトレーニングを考えます。
A君に「1周60秒のペースでグラウンドを5周走らせる」
「1周60秒のペースでグラウンドを5周」というトレーニングの場合、「60秒のペースで」というのが「強度」、「何周走らせるか」が「量」になります。
A君に「1周60秒のペースで5周」のトレーニングは「強度」が高すぎるということはわかると思います。A君は1周60秒でしか走れないのに60秒のペースで5周走ることは無理です。「120秒のペースで」のようにペースを落として走らせなければよいトレーニングにはならないでしょう。
このようにトレーニングを考える際は「強度」と「量」をコントロールする必要があります。
3.まとめ
トレーニングをする際に考えるべきことは「刺激」に対して「適応」が上手く起きているかです。「刺激の大きさ」をコントロールし、選手のパフォーマンスが向上するように、トレーニングを振り返って、「刺激が強すぎないか」、「量が多すぎないか」など常に考えることが大切です。今回はすごく単純な例を示しましたが実際には考慮することまだまだたくさんあります。徐々にブログに載せていければと思います。
<参考文献>
・Practical Programming for Strength Training (English Edition), Mark Rippetoe, Andy Baker, The Aasgaard Company, 2014
・Strength Training: Your Ultimate Weight Conditioning Program(Sports Illustrated Winner’s Circle Books), John Garhmmer, Sports Illustrated, 1991