コーチングに必要な動きを覚える過程の話

指導者向け

こんにちは、佐々木です。

東京でS&Cコーチとしてパフォーマンス向上を目的としたトレーニング指導をしています。

今日は運動学習についてお話しようと思います。

人が運動を学習する過程は国語や算数などとは少し違って、感覚をいかに養うか、ところがポイントとなります。

自己観察という言葉があります。

自己観察とは自分がどのように動いているのかがわかることです。より優れた選手ほど自己観察が優れていると言われています。

例えば、跳び箱が得意な子どもに「今どうやったの?」と質問すると、

A:「少しゆっくり走っていって手前でタイミングよくジャンプして跳べば上手くいくよ」
B:「ドン!って跳んだら上手くいった」
C:よくわかんないけどなんか上手くいった

という3人がいたとします。

運動の習熟度から言うとA→B→Cの順で優れていることがわかります。

自己観察が優れている、つまり自分がどのようにすれば上手く動けるかがわかっていると言うことはその運動の再現性が優れていることになります。

Cの子どもはもう1回やると失敗するかもしれません。

こんな感じで、「今どんな感じでやったの?」という質問に対してどう答えるかによって、いま運動学習がどれくらい進んでいるかを知ることができます。

また、質問の返答によってコーチが撮るアプローチも変わります。

自己観察が優れている選手により細かいことをアドバイスしてもそれを試すことができますが、自己観察がまだ育っていない選手に細かことを話ても伝わりません。

さっきの例でいくと、Cの子どもに「じゃあ今度はここをこうやってやってごらん」と話してもそれを試すことはできない可能性が高いです。

そもそも自分でどうやっているかがわからないので。

Cのような段階ではとりあえずたくさん練習をして、自分が上手く行った時と行かなかった時の感覚の違いの区別を付けられるようにする必要があります。

これはトレーニングにも応用可能で、「今どんな感じでしたか?」と質問をして、使いたい筋を使っている感じがするのか、そうでないのかで運動感覚がどれくらいあるのかを判断できます。

感覚がわからない人に〇〇をより使うのを意識して、と言うのはなかなか難しくて、フォームがあっていればとりあえず進めてしまい、あえて筋肉痛を起こすと言うのも一つの手です。

次の日に痛くなっていると言うことはそこを使っている証拠になるので、そこから徐々に筋を使っている感覚が生まれます。

特に一般で運動経験がない方は、自分でどこの筋を使っているか意識できないことが多いので、アプローチはその都度工夫する必要があります。

自己観察ともう一つ、”他者観察”という言葉があります。

他者観察とは他の人の運動を観察する能力のことです。

ここでいう観察とは、運動を外から見るだけでなく、その人がどのような感覚で行っているのかという運動共感が含まれます。

モノマネが上手な人、特に動きの真似が得意な人は他人が行っている運動の感覚を捉えるのが得意な人と言えます。

僕の同僚が冗談半分に「筋肉の声が聴ける」と話していますが、運動学という分野からみてもあながち間違いではないです。

また、人の動きの力感がわかるということは、他人の動きの感覚を感じ取ることができているということとほぼ同じ意味だと思います。

つまり運動共感ができているということです。このように運動は言葉では表しきれない「感覚」で表現されることが多くあります。

バイオメカニクスや解剖学で運動を外から捉えるだけでなく、人がどんな感覚で動いているのか、という運動学習の知識はコーチングでかなり役に立ちます。

運動学習については”運動学”と言う分野で研究されているのでよかったら調べてみてください。