#18 パフォーマンスの向上にはやっぱりウエイトトレーニング
僕がパフォーマンスの向上を目指してトレーニング指導をする場合,一般の方でもアスリートでもウエイトトレーニングが基本となります.多くの場合,ウエイトトレーニングが最も効率よくパフォーマンスを向上させられるからです.
世の中には”体幹トレーニング”や”インナーマッスルを鍛える”など色々なトレーニングの言葉を目にします.トレーニングに関する雑誌を手にするとベーシックなウエイトトレーニングよりも”体幹”や”インナーマッスル”などの記事を多くみる気がします.「筋力が向上する」と称してダイナミックストレッチに似た運動を紹介してあるものもあります.運動をしたことがない人であれば何かしらの運動をすれば大なり小なり身体は変化します.しかし,それらの運動が効率よくパフォーマンスを向上させるのかは疑問です.
僕が調べたところ,そもそも「インナーマッスル」に明確な定義はありません.従って「インナーマッスルってなに?」と聞かれてはっきりした答えを出せる人は恐らくいないでしょう.ここでは話を進めるために仮に「インナーマッスル=姿勢を維持するために活動する筋」とします.このように定義するとインナーマッスルは立っているだけでも使われていると考えられます.なぜなら「姿勢を維持するために必要な筋」が使われていなければ我々は立つことができなくなってしまうからです.立っているだけで使われているということは歩いていても当然使われます.走っていても使われるでしょう.従って「アウターマッスルを鍛えるだけじゃインナーマッスルは鍛えられない」みたいな理論はそもそも成り立たないことになります.
トレーニングを受けている人が可動域に制限があるとすれば,可動域を改善するためにダイナミックストレッチは有効になるでしょう.しかし,筋力を向上させるという目的でそれらの運動を行うことには無理があります.”過負荷の原理”というものがあり、人は自分ができること以上のことをしなければ筋力は向上しません.つまり,身体が適応できる範囲以上の刺激を身体に与える必要があります.ダイナミックストレッチはそもそも刺激が小さいので,ダイナミックストレッチを一生懸命行っても筋力は向上しないでしょう.
トレーニングに費やす時間は一般の方で週1~2回,アスリートでも週2~3回,一回のセッションで60~90分かと思います.意外とトレーニングにかける時間は少ないものです.その限られた時間でできる限りパフォーマンスを測ろうとした場合最も効率よく身体能力を改善するのはウエイトトレーニングです。ウエイトトレーニングは「過負荷の原理」を適応するのに最も適したトレーニング様式です.筋力の向上に伴って負荷を効率よく漸進できます.「負荷を重くするとケガのリスクも高まるのではないか」という意見もあるかもしれませんが,健康的なフォームでトレーニングを行えばそのリスクを最小限にすることができます.「ウエイトをすると身体が硬くなる」とか「ウエイトをすると身体が重くなる」とかいまだに言われていますが,やり方を工夫すればそんなことは全くありません。正しくトレーニングすれば可動域は改善しますし身体能力も確実に向上します。
アスリートなら競技練習、学生なら競技練習に加え勉強する時間も必要になります。一般の方であれば仕事やプライベートの合間を縫って時間を作りトレーニングをするでしょう。その時間を無駄にしないためにも、効果的かつ効率的で副作用を最大限少なくした運動指導ができるよう自分を磨き続けたいと思います.