トレーニング指導に必要なこと【プログラム作成のプロセス】
こんにちは、佐々木です。
今日は自分が具体的にどのようにトレーニングを指導しているか、因数分解して考えてみました。トレーニングに興味がある方、今後トレーニング指導者になりたいという方などの参考になれば幸いです。
プログラムを作成するための前提条件
まず自分の提供するトレーニングの目的は「怪我をせずパフォーマンスを向上させること」です。その目的を達成するために
①全てのトレーニング種目のフォームに、そのフォームで行う理由がある
という前提があり
②動きを見て、その人の身体の特徴を評価しつつ、日程や環境その他諸々の状況を鑑みた上でプログラムを作る、ということをしています。
具体的に説明します。
身体の特徴を把握する
自分はトレーニングを進める中でその人の身体の特徴を把握しています。
前屈で床に手がつかない人は「身体が硬い」とよく言われますが、なぜ前屈ができないのでしょうか?前屈ができない人は身体全部が硬いのではなく、腿裏(ハムストリング)が硬いことが原因です。
ここで「前屈ができない=腿裏が硬い」ということがわかっていれば、前屈をすることで腿裏の硬さを評価することができます。
このようなことをトレーニング中にしていて、ある動きをしてその動作ができないというところから各部位の柔軟性を評価しています。
また、腕立て伏せをする時に最初は身体が真っ直ぐの姿勢でできていたものがキツくなってくると腰を反らせて上がろうとします。
後半に腰が反る理由は、胸筋が疲労してきたからです。またそもそも胸に筋力がない人は身体を真っ直ぐにした姿勢で腕立てができません。
つまり、
「身体を真っ直ぐにして腕立てをする」という条件(フォーム)を与えて腕立てをさせ、腕立てが
できる=胸に筋力がある
できない=胸に筋力がない
ということがわかります。
このように定められたフォームでトレーニング種目を行うことで筋力や柔軟性の有無を評価することができます。トレーニングをしながら評価をするためはトレーニング種目の特徴をより深く理解していることが重要です。
手幅や足幅を変えることによってどのように負荷が変わるのか、疲労してきた時にどのような動きをするのか、その原因は何かなど深掘りしておく必要があります。
種目間の違いを把握しておく
トレーニングを指導する上で、「①提供する全てのトレーニング種目にそのフォームで行う理由がある」という前提があることをお伝えしましたが、ここでもう1つ大切なことがあります。
それは「種目間の違いを把握しておくこと」です。
例えば、ベンチプレスも腕立て伏せも同じ胸を鍛える種目ですが、それぞれ違いがあります。大きな違いとしてはバーベルを使うか自分の体重を使うかということになりますが、もっと細かくいろいろあります。
種目間の違いを把握し、その種目のメリット・デメリットを把握しておくことで、なぜその種目をプログラムに取り入れたのかが明確になります。
より良いプログラムを作る上で、フォームの理由を知っておくとともに、種目間の違いを把握しておくことも大切です。
スケジュールや環境、その他の条件を考える
ここまでの前提知識があった上で指導を進めながらプログラムを作成していくのですが、プログラムで1番先に考えることは「試合までのスケジュール」です。
選手には試合があります。つまり一番の目的は最も良いコンディションで試合に臨むことです。また、筋力を高めてパフォーマンスを上げるということも当然必要です。それをいかに組み上げるかが腕の見せ所になります。
プログラムを作成する時は、試合の日程から逆算し、スケジュールを確認した上で、種目数やレップ数、セット数などをコントロールすることになります。また、その人の現状(どれくらい筋力があり、どれくらいのパワーがあり、どんな課題があり、今取り組めることは何か)も加味する必要があります。
さらにいうと、ジムに来てどれくらいトレーニングできるのか、自分でトレーニングできる環境はあるのか、練習はどのように行っているのかなどのトレーニング環境や練習状況も加味します。
また、社会人であれば「仕事」があります。学生であれば「授業」があります。仕事や授業があれば、身体的な疲労は少ないかもしれませんが精神的な疲労があります。また場合によっては「実習」などで数日〜数週間練習できないことも予想されます。これも加味します。
プログラムを作るということは、ただ種目を並べて回数を決めて、セット数を決めて・・・、なんていう単純なものではないです。設定したプログラムを行った時にくる疲労や効果、種目を入れ替えた時に起こる疲労や効果の違い、前述したスケジュール的な問題、選手の周りにある環境の問題など多くの要素を加味した上でプログラムを作成することが必要です。
また、プログラムを作ったとしてもトレーニングを進める中ではいろいろなことが起きます。練習がハードになったことで予想よりも身体が疲労していて、用意したプログラムを修正する必要も出てきます。その時に、負荷を落とすのか、回数を落とすのか、セット数を減らすのか、、、様々な方法がある中でどれを選択するのかを考えます。
練習で怪我をし、トレーニングができないということもあります。怪我の具合によっては、種目を工夫すればできることもあるので、痛みが出ないようにトレーニングを継続するためのアイデアを持っていなければなりません。
また、トレーニングだけでなくリカバリーについてもアドバイスを送ります。栄養や睡眠はトレーニングの効果を高めるためにとても重要で、しっかりトレーニングをしても全く何も食べていなければ効果は得られません。
例えば、大学生に成り立てで一人暮らしを始めたばかりの学生であれば、生活するということもそもそものストレスになります。実家というのは結構恵まれた環境で、食事、洗濯などの家事をしなくても済みます。しかし一人暮らしになると、これまでやってもらっていた家事を自分ですることになります。食事を作り、洗濯をして、加えて勉強もして、というのは結構大変なものです。特に生活に慣れるまでは食事が上手く取れないということもあるでしょう。この時に、できることを一緒に探してトライするためのにサポートをすることも大切だと思っています。
また、指導技術があったとしても選手と「信頼」が築けなければ自分の話なんぞ聞いてもらえません。だからこそ「コミュニケーション」はすごく大切にしています。
最終的にトレーニングをするのは自分ではなく選手です。本人が納得した上でトレーニングを進めることが一番です。話をした結果、自分が考えるベストではない場合もありますが、トレーニングを進める中で話し合いながらベストな形を探っていくという柔軟性もコーチには必要だと思っています。
心掛けているのは「説得」するのではなく「納得」してもらうことで、そのために必要なことは「発信」ではなく「会話」です。
まとめ
「選手をサポートしています」とブログやSNSで発信していましたが、自分が普段やっていることを因数分解するとこんな感じです。思っている以上に色々なことを考え、準備し指導に当たっています。
ちなみに失敗することもよくあります。これがいいと思ってプログラムを組んだものの、こっちの方がよかったな、と思うことはよくあります。その度に何がどうすればいいかに思考を巡らせます。今の自分以上のものはいくら背伸びしても出てこないので、「今のベスト」を出し続けられるよう心掛けています。
クライアントの方をより良くできるのであれば方法はなんでもいいと思っていて、このトレーニングをやらなきゃダメだ!という考えはそれこそ指導者のエゴです。
ただその一方で、なんでもいいというわけではありません。指導することに根拠がなければ、結果的に目の前にあるものを改善することになりません。論理的な背景がないまま提供するエクササイズは時間を浪費するだけです。
また、自分ができる範囲を明確にしておくということも大事だと思っています。ボディーメイクは得意ではないですし、怪我をした時の対処はできません。その時は別の専門家にお任せしています。
これまで幸運にも多くの方のトレーニングに携わることできました。「膝の痛みがなくトレーニングができた」「怪我をしにくくなった」「動きがよくなってきた」などのフィードバックをいただいているので、きっと悪いことはしていないと思います。
もっと多くの方のサポートがしたいというのが今の想いです。ただ、1人が関われる人数なんてたかがしれてるので、もっと大きな「仕組み」を作ることが必要なんだろうと考えています。さて、何ができるんでしょうか。
「トレーニングが絶対」とは思っていませんが、やってみればきっといいことがあります。個人的には、オススメです。もし良ければ一緒に頑張りましょう。