【筋力 vs パワー】プログラムで優先順位をつける時の根拠

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こんにちは、佐々木です。

今日は論文を1つご紹介します。

Prue Cormie, Michael McGuigan, Robert U. Newton, Influence of strength on magnitude and mechanisms of adaptation to power training., Medicine and science in sports and exercise 42(8): 1566-81

この論文は、自分がトレーニングプログラムを作成する時に参考にしている論文の1つです。以下、ざっくり論文の内容について説明します。

【研究背景・目的】
これまで、先行研究により、筋力トレーニングは筋力レベルが高い人と低い人によって適応のメカニズムが異なることが明らかとなっています。つまり、筋力が低い人は神経系の適応がより顕著であり、トレーニング経験を積むに従い、形態的な適応が重要となります。

一方、パワートレーニングにおいては筋力レベルの違いによってトレーニングに対する適応の違いがあるかどうかは明らかとなっていません。

そこで、この研究では筋力レベルの高い人と低い人にパワートレーニングを行わせ、適応の度合い、適応のメカニズムに違いがあるかを明らかにすることを目的としています。

【方法】
BSQに熟練した男子35名を用いて10週間のパワートレーニングを行わせ、トレーニング前(baseline)、5週後(mid)、10週後(post)にテスティングを行い分析を行いました。

<群分け>
バックスクワットの1RMにより
・stornger group(1RM/BM=1.97±0.08kg, 8名)
・weaker group(1RM/BM=1.32±0.14kg, 8名)
・control group(1RM/BM=1.37±0.13kg, 8名)
の3群に分けて比較を行っています。

<主なトレーニング内容>
週3回トレーニングを行わせました。
(DAY1・3)
6×7 最大努力のスクワットジャンプ 0%1RM rest3分
(DAY2)
5×5 最大努力のスクワットジャンプ 30%1RM rest3分

<テスティング項目>
・アイソメトリックのSQテスト
・ジャンプスクワット
・40mスプリントテスト
など

【主な結果】
・トレーニング前後で0%1RMジャンプスクワットテストのパワーの最大値、平均パワー、ジャンプ高は、stronger group、 weaker group共に有意に向上しました。

・トレーニング前後の0%1RMジャンプスクワットテストの変化率はstronger groupとweaker groupの間に有意な差はみられませんでしたが、効果量(ES)の分析から特にmid testにおいてstronger groupが大きな向上を示しました。
→つまり筋力が高い人の方が筋力が低い人よりもパワートレーニングにより大きな適応を示したといえます

【この論文をどのように応用しているか】
この研究から、筋力が高い選手の方が筋力が低い選手よりもパワートレーニングへの適応が大きかったことが明らかとなっています。

つまり、トレーニング経験が浅い筋力が低い選手には、パワートレーニングよりも筋力トレーニングを優先し、まず筋力を高め、ある程度の筋力がついたところでパワートレーニングを行った方が効率が良いと言えます。(別の研究で筋力が低い選手はパワートレーニングを行っても筋力トレーニングを行っても、パワー系運動への適応は同程度であったことが示されています(1))。

ただ実際には、この研究のようにトレーニングでパワー系運動のみを行うことはなく、パワー系トレーニングも筋力トレーニングも同じ日に行うことがほとんどです。

また、選手があとどれくらい競技に取り組むかなどを踏まえると、この論文で筋力が高い方がパワー系トレーニングへの適応は大きいからまずは筋力を高めるべきだ、としてしまうと、結果的に選手のパフォーマンス向上に寄与しないまま、競技生活が終わってしまうということもなくはないでしょう。

いろいろ踏まえると、基本的には筋力が高い方がパワー系トレーニングへの適応率は大きいし、筋力が低い人は筋力を向上させるだけでパワーも向上するからトレーニング初心者には筋力系のトレーニングを優先するけれど、それが全てとも限らないです、ということです。

研究はあくまで研究で、どこまで現実に応用できるかはその論文の実験設定や結果などを総合的に加味した上で、トレーニング指導に生かすということが大切です。この論文でこう言っているからこれが正しい!としてしまうときっと右往左往します。

まず、自分のトレーニング指導の軸があり、それに肉付けをしたり、微調整を加えるという形で論文を参考にしていくというのが現実的かと思います。

最終的にはこれは僕の意見なので、ご自身で論文にアクセスして確かめることをお勧めします。
今回はお勧めの論文のご紹介でした!

参考文献
1. Prue Cormie, Michael McGuigan, Robert U. Newton, Adaptation in athletic performance after ballistic power versus strength training.Medicine and science in sports and exercise 42(8): 1582-98. 2010